抄録
細胞壁パープルホスファターゼ(purple acid phosphatase)は、プロティンホスファターゼを含むメタロホスフォエステラーゼファミリーのメンバーであり、その機能はまだ明らかにされていない。パープルホスファターゼを構成発現する形質転換タバコ細胞は、細胞分裂速度が速まり、倍化時間が半減した。また、細胞は凝集した形態を示した。形質転換体と野生株を比較したホスホプロテーム解析により、糖鎖分解酵素であるα-キシロシダーゼおよびβ-キシロシダーゼ(β-グルコシダーゼ)がパープルホスファターゼの基質と推察された。形質転換体と野生株を比較したところ、グリカナーゼ活性に大差は無いにもかかわらず、グリコシダーゼ活性は形質転換体の方が野生型より低かった。従って、形質転換体ではα-キシロシダーゼとβ-キシロシダーゼ(β-グルコシダーゼ)に対する基質が多く蓄積し、それが形質転換体の特質を示す可能性が考えられた。そこで、細胞にキシログルカンオリゴ糖あるいはキシロビオースを与えたところ、前者の場合、細胞の表現型が形質転換体と一致した。一方、後者の場合は細胞の形に変化は見られず、逆に増殖速度は抑制された。以上の結果から、パープルホスファターゼの基質はα-キシロシダーゼであると結論した。