抄録
被子植物の生殖器官である花は、一般的にがく・花弁・雄しべ・雌しべという器官で構成されており、その器官の数・配列・形態などが多種多様である。原始的な被子植物の花は全て放射相称であり、花器官の一部がらせん配列である。進化の過程で、被子植物の花はらせん配列から輪生配列になり、さまざまな系統で放射相称から左右相称へと変化していった。本研究では、らせん配列から輪生配列が生じた事が花形態の多様性にとって最初の重要な出来事として考え、輪生配列の起源について調べることを目的とした。そのためには、花器官がらせん配列である植物を用い、花の発達過程の形態およびそれに関わる遺伝子群の機能を調べ、輪生配列の植物と比較する必要があると考えた。
私達は以前から真正双子葉類の基部に位置するキンポウゲ科のタガラシに着目している。タガラシは多数の雄しべと雌しべがらせん配列しており、またライフサイクルも約4ヶ月と短くモデル植物になりうる可能性を持っている。そこで本研究では、このタガラシにおける花芽形成の発生初期の機構を解明することにした。そのために、現在以下の実験を行っている。1)花芽分裂組織決定遺伝子であるAPETALA1とLEAFYの相同遺伝子の単離。 2)栄養生長期と生殖生長期におけるこれら遺伝子の発現パターンの解析。3)タガラシの形質転換系の確立。