抄録
側根形成能が顕著に低下するシロイヌナズナ変異体 crane-1 (cra-1) および cra-2 は、互いに独立に得られた新奇の優性変異体であり、本葉の下偏成長や矮化など類似した表現型を示す。両変異体において、オーキシンシグナル伝達で働くと考えられる IAA18 のドメイン II に、アミノ酸置換を伴う機能獲得型変異が見つかった。このことは、CRANE 遺伝子が IAA18 であることを強く示唆する。リアルタイム RT-PCR を用いた発現解析の結果、IAA18 遺伝子は芽生えの根を含む植物体のほぼすべての器官で発現していた。われわれのこれまでの研究により、IAA14/SLR ならびにこれと直接相互作用する転写活性化因子 Auxin Responce Factor 7 (ARF7) および ARF19 が側根形成の初期過程で重要な機能をもつことが示されている。IAA18 タンパク質もこれら 2 つの ARF タンパク質と相互作用することを酵母 two-hybrid 法により確認した。これらの結果は、IAA18 も IAA14/SLR と同様に、これらの ARF と相互作用して側根形成の制御に働く可能性を示唆する。現在、変異型 IAA18 タンパク質を発現する植物体の詳細な解析、レポーター発現系を用いた IAA18 の発現部位の同定などを進めており、その結果も合わせて紹介する。