抄録
高等植物の根系構築には胚発生以降の側根形成が重要な役割を果たす。我々は、側根形成の分子機構を明らかにすることを目的として、シロイヌナズナから側根形成能が顕著に低下する劣性変異体rlr50(reduced lateral root formation50)を単離した。rlr50変異体は側根原基の形成密度が野生型と比較して約6割に減少するほか、ロゼット葉の矮小化を示す。また、rlr50変異体では外性オーキシンに応答した主根伸長の抑制と側根形成の促進が起こることから、rlr50変異はオーキシン応答に直接影響を及ぼさないと考えられる。マップベースドクローニングと形質転換による相補性試験の結果、RLR50遺伝子はNADPH酸化還元酵素において保存されたドメインの一部を持つ機能未知のタンパク質をコードすることを明らかにした。また、レポーター遺伝子を用いた発現解析の結果から、RLR50遺伝子は根を含む植物体全体の器官、組織で発現していることが分かった。さらに、RLR50-GFP融合タンパク質を発現する培養細胞および植物体の観察から、RLR50タンパク質は細胞質に局在することが強く示唆された。これらの結果から、RLR50はシロイヌナズナ側根形成の初期過程に直接または間接に関わる新規因子であると考えられる。