抄録
茎頂分裂組織から新たな器官原基が形成されると、その周囲に境界部が生じる。器官境界部は「くぼみ」を形成することで隣り合う器官どうしを物理的に分離すると共に、新たな分裂組織が形成される場として機能する。シロイヌナズナのCUP-SHAPED COTYLEDON遺伝子CUC1、CUC2、CUC3は、いずれもNACドメインを持つ転写活性化因子をコードしており、胚性および腋生分裂組織の形成とシュート器官境界部の形態形成に重要な役割を果たす、互いに機能が重複した遺伝子群である。今回CUC遺伝子の下流で機能する遺伝子の同定を試みた。野生型とCUC1過剰発現体の芽生え、および野生型とcuc1 cuc2二重変異体の胚の二種類の組み合わせについて、それぞれマイクロアレイを用いた遺伝子発現の比較を行い、CUC1・CUC2に正に制御される遺伝子の一次スクリーニングを行った。次に、得られた遺伝子についてRT-PCR法による二次スクリーニングを行い、CUC1過剰発現体において発現が上昇する、またはcuc1 cuc2において発現が低下する、のいずれかの条件を満たす下流候補遺伝子が合計21個得られた。現在これらの候補遺伝子について、野生型胚における発現パターン、および各遺伝子の発現に対するCUC1とCUC2の影響を解析中であり、その結果を報告する。