日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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根毛の形態形成を制御するホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼ遺伝子AtPIP5K3
*草野 博彰安田 敬子島田 浩章岡 穆宏青山 卓史
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p. 262

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抄録
ホスファチジルイノシトール(4,5)-ビスリン酸(PtdIns(4,5)P2)はホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼ(PIP5K)によって生合成され、多くのタンパク質の活性や細胞内局在を調節する。このPIP5Kは低分子量Gタンパク質やホスホリパーゼDなどと機能的に相互作用することでリン脂質シグナル伝達経路を構成すると考えられる。植物細胞の形態形成では、低分子量Gタンパク質(ROP1,2)やホスホリパーゼDζ1(PLDζ1)、またPtdIns(4,5)P2が根毛や花粉管の先端伸長に関わっていることが報告されている。このため、リン脂質シグナル伝達経路が植物細胞の先端伸長を制御していると考えられる。しかし、植物のPIP5Kの生理機能や分子機能はほとんど明らかにされていない。我々はこれまでに、シロイヌナズナに11種あるPIP5Kアイソフォームのうち、AtPIP5K3遺伝子が根毛の伸長に関わっていることを明らかにしてきた。そこで今回、AtPIP5K3の細胞内局在を詳細に解析したところ、AtPIP5K3が伸長する根毛の先端部に好んで局在することが明らかとなった。また、AtPIP5K3の過剰発現個体では一個の根毛細胞から複数の根毛が発生していることを発見した。これらのことは、AtPIP5K3が根毛の伸長と出芽の両方に関与することを示しており、また根毛の伸長を促進するPtdIns(4,5)P2は根毛の先端で局所的に生合成されていることを示唆している。
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© 2007 日本植物生理学会
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