日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナの温度感受性突然変異体rid2を用いた脱分化・細胞増殖再活性化過程の解析
*大林 祝杉山 宗隆
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p. 279

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抄録
器官再生の過程では、形態形成の基盤となる要素機構の多くが集約的に動員されていると考えられる。私たちはこうした要素機構の解明を目指し、器官再生の好例である不定根形成に着目して単離したシロイヌナズナ温度感受性突然変異体の解析を進めている。本発表では、これらの変異体の1つrid2の表現型に基づき、脱分化・細胞増殖活性化の素過程についての新知見を報告する。
rid2は胚軸のカルス化に関しては強い温度感受性を示すが、根の場合は感受性が部分的であり、制限温度下で培養した根外植片は串だんご状の不連続なカルスを生じる。責任遺伝子のRID2は核局在シグナルをもつメチルトランスフェラーゼ様タンパク質をコードしており、何らかの核内メチル化反応への関与が推測される。rid2の胚軸からのカルス形成をレポーター遺伝子等により詳しく解析したところ、制限温度下では細胞増殖の再開がほぼ完全に阻害されること、核小体の拡大を伴う核の形態異常と細胞の歪な肥大が起きることが確認された。一方、根外植片では、カルス化が抑制された領域においてもある程度の細胞増殖は観察され、rid2変異が再開直後の細胞増殖に影響してカルス化の進行を妨げていることが窺われた。この際、核の形態異常や細胞の肥大は見られなかった。これらの結果は、脱分化・細胞増殖活性化の過程において、少なくとも2つの質的に異なる点でRID2がはたらくことを示唆している。
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© 2007 日本植物生理学会
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