抄録
MET1(Methyltransferase1)遺伝子は、ゲノム複製時にCpG配列のシトシンの5位にメチル基を付加する維持型DNAメチル化酵素遺伝子であり、細胞増殖過程でのエピジェネティックな遺伝子発現の制御に関与すると考えられている。イネにはMET1a、MET1bの2遺伝子が存在し、両遺伝子の幾つかの組織での発現の報告はあるが、遺伝子発現部位と機能の詳細な解析は未だ報告されてはいない。そこで我々は、両遺伝子の発現と機能の解析を目指して、相同組換えによる遺伝子ターゲティングを試みた。強力なポジティブ・ネガティブ選抜を用いた遺伝子ターゲティングによるWaxy及びAdh遺伝子のノックアウト変異体作出については既に2004年と2005年の本会で報告しているが、今回は、標的遺伝子のプロモーター領域の下流にGUS遺伝子を挿入するノックインにより、MET1a及びMET1b遺伝子を個別改変した形質転換カルスを得てサザン解析を行い、各々15及び3系統の改変体を得ることができた。また、これらカルスでのGUS遺伝子の発現も確認できた。さらにMET1a遺伝子を改変した形質転換当代(T0)のヘテロ植物体でGUSレポーター遺伝子の発現を解析したところ、主に分裂組織での染色が観察された。これらの結果を踏まえて、ノックインの技術的側面についても議論する。