抄録
我々は、アグロバクテリア菌による大規模形質転換系と強力なポジティブ・ネガティブ選抜及びPCRスクリーニングを組合わせたイネの遺伝子ターゲティング法を用いて、植物のDNAメチル化酵素遺伝子の1つDRM (DOMAINS REARRANGED METHYLTRANSFERASE)のイネホモログOsDRM1a遺伝子を改変したイネの作出を試みた。独立した7系統のOsDRM1a改変カルスを分離して植物体を再分化させ、6系統のトランスジェニックイネ(T0)を得た。サザン解析により、これら6系統のT0イネは全てOsDRM1a遺伝子が予めデザインした構造をヘテロに持つことも確認した。この内の3系統の自殖後代(T1)を展開し、ホモ個体を解析したところ、矮化、分げつの減少、出穂遅延、頴花の形態異常、不稔などが観察された。また、RT-PCR解析により、ホモ個体の葉ではRIRE7やCRRなどセントロメア特異的なレトロトランスポゾンの転写の活性化も観察された。それ故、OsDRM1aはイネの正常な発生に必要であり、一部のレトロトランスポゾンの転写抑制にも関わることが示唆された。