抄録
パーム油を産生する油糧作物アブラヤシ(Elaeis guineensis)では、組織培養から再生させた植物体でmantledと呼ばれる形態異常が高頻度(5~10%)で発生することが知られている。その際、雄蕊から雌蕊への変化が起きていることから、雄蕊決定に関与するクラスB遺伝子にエピジェネティックな変化が起きている可能性が示唆されている。今回我々は、花で強く発現しているアブラヤシのDEFICIENS相同遺伝子EgDEF1、GLOBOSA相同遺伝子EgGLO1およびEgGLO2のゲノム配列を決定し、それらの野生型植物体でのシトシンメチル化の状態をbisulfite sequencing法で調べた。その結果、いずれの遺伝子もプロモーターや5’ UTRではメチル化されていなかったが、EgGLO1の少なくともexon 4からintron 6までの1 kb以上の領域で、CG、非CGのいずれの配列も高度にメチル化されていることがわかった。一方、EgGLO2の対応する領域ではCG配列のみがメチル化されていた。EgGLO1とEgGLO2は配列の相同性が高いが、EgGLO1のみintron 6にマイクロサテライト様配列を持つ。これらの結果は、このマイクロサテライト様配列がEgGLO1の非CG配列の高メチル化に関与していることを示唆する。本研究は平成15年度産業技術研究助成事業「アブラヤシ(Elaeis guineensis)の生産性向上の基礎となる分子遺伝学的研究」により実施された。