日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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蛍光寿命測定を用いた植物細胞内環境の可視化
*稲田 のりこ
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p. 310

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抄録

蛍光寿命とは、蛍光物質が励起されてから基底状態に戻るまでの時間の長さのことを言う。Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy (FLIM)は、組織内・細胞内の蛍光寿命を測定し、これを可視化して示す手法であり、現在非常に注目されている。蛍光色素を利用した細胞内のpH測定やイオン濃度測定、レシオイメージングやアクセプターブリーチングなどの方法によるFRET効率の測定では、従来蛍光の強度に依存した観察・測定が行われている。しかし、蛍光強度は、蛍光色素の細胞内への取り込み効率や蛍光褪色、及び蛍光タンパク質の発現量などの様々な要素に依存する為、正確な定量が困難である。一方蛍光寿命は、蛍光の強度に依存しない蛍光物質特有の値である為、蛍光強度を用いた測定に伴う様々なアーティファクトを除いた正確な定量を行うことが出来る。また、蛍光寿命はpHなどの細胞内環境の違いによって変化することが知られている。これを用いることにより、オルガネラや細胞内マイクロドメインの環境変化を追うことが可能である。
筆者は、この蛍光寿命測定法を用い、蛍光タンパク質の細胞内局在の違いによる蛍光寿命の変化、またpHによる蛍光寿命の変化などを調べたのでそれを報告する。これらのデータは、病原体応答を始めとした様々な環境の変化に伴う細胞内変化の定量的観察の基盤となることが期待される。

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© 2007 日本植物生理学会
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