抄録
C4光合成ではCO2は葉肉細胞でPEPカルボキシラーゼによって固定され、C4ジカルボン酸の形で維管束鞘細胞に運ばれたのち脱炭酸され、RubisCOによってに再固定される。このCO2濃縮機構によりRubisCOのオキシゲナーゼ反応が抑えられるため、C4光合成は乾燥条件や高温条件下などで有利に働く。しかしその代謝反応にはC3光合成よりもより多くのATPが必要となる。C4植物では光化学系I循環的電子伝達活性が高いことが報告されており、この電子伝達がATP合成を駆動するためにΔpH形成に関与することが示唆される。これまでにシロイヌナズナではPGR5に依存する経路とNDHに依存する経路の二つの循環的電子伝達が働くことが示されている。C4光合成における2つの経路の役割を解明するため、C3型およびC4型(NADPリンゴ酸酵素型)のそれぞれの種が存在するフラベリアを用いてPGR5およびNDHの発現量と組織局在を調べた。NDHの発現量はこれまでの報告と同様にC4種の維管束鞘細胞で非常に高くなっていた。PGR5はC3種よりもC4種において発現量が高く、葉肉細胞よりも維管束鞘細胞において発現量が高かった。これらの結果からフラベリアではPGR5依存とNDH依存の2つの光化学系I循環的電子伝達はどちらもC4型光合成の駆動に貢献していることが示唆された。