抄録
脂質は膜タンパク質の重要な構成成分の一つであり、ラン色細菌の光化学系II(PSII)において、14個の脂質分子が結合していることが結晶構造から示された。我々は、PSIIにおける脂質の役割を明らかにするため、精製したPSII二量体をリパーゼ及びホスホリパーゼ処理し、電子伝達活性への影響を調べている。好熱性ラン色細菌Thermosynechococcus vulcanus由来PSII二量体をホスホリパーゼまたはリパーゼ処理することにより酸素発生活性がそれぞれ40%、16%低下した。そのうち、ホスホリパーゼ処理による酸素発生活性の低下は主にQAからQBへの電子伝達の阻害によるものであった。しかし、ホウレン草由来PSII二量体に同様な処理を施したところ、酸素発生活性がいずれも80%以上低下し、その低下はPSIIの酸化側、還元側の両方で阻害を受けたことに起因することが分かった。両処理の脂質含量への影響を調べたところ、T. vulcanus由来PSIIに比べ、ホスホリパーゼ処理がホウレン草PSIIのリン脂質含量を、またリパーゼ処理が同PSIIのMGDG含量を著しく低下させた。これらのことから、好熱性のT. vulcanusに比べ、ホウレン草PSIIにおける脂質分子の結合が弱く、これがホウレン草PSIIの安定性を著しく低くした重要な原因の一つであると推定された。