抄録
RSOsPR10 (Root Specific Oryza sativa Pathogenesis-Related 10)は、イネ根におけるプロテオーム解析により乾燥、塩処理により発現が誘導されるタンパク質として検出され、これまでの研究により、mRNAの発現が乾燥、塩、プロベナゾール、いもち病菌、ジャスモン酸(JA)によって根に特異的に誘導され、低温、アブシジン酸、サリチル酸(SA)によっては増加しないことが分かっていた。本研究では、RSOsPR10に対する特異的抗体を用いてタンパク質レベルでの解析を進めた。その結果、塩および傷害処理におけるRSOsPR10の発現誘導はJAを介すること、さらにSAがJAの作用を抑制することが示された。また、JA欠損ミュータントであるhebibaを用い、この発現誘導がJA経由であることを確認した。さらに、イネ幼植物体におけるRSOsPR10の発現局在を、凍結切片を用いた免疫組織化学的手法を用い組織レベルで解析したところ、RSOsPR10は塩やJA処理前には検出されないが、処理後約24時間で根のほぼ全長にわたり維管束系を取り巻く細胞群(皮層)に発現していることが明らかになった。この時、葉での発現は観察されなかった。さらに、塩またはJAと同時にSAを処理することによってRSOsPR10の発現が抑制されることが組織レベルでも観察された。