抄録
乾燥ストレスによるアブシジン酸(ABA)生合成の活性化は植物の乾燥応答において重要な調節である。シロイヌナズナ9-cis-epoxycarotenoid dioxygenase 3(AtNCED3)は乾燥時のABA生合成の律速酵素であることが知られているが、その調節メカニズムはほとんど理解されていない。そこで、乾燥応答におけるAtNCED3蛋白質の量的変化と植物体内のAtNCED3の局在性を解析し、ABA合成部位に関する知見を得ることを目的として研究を行った。まず、ウエスタン解析により乾燥応答におけるABA生合成酵素(AtNCED3、AtABA2、AAO3)の量的な変動を調べた。乾燥処理前の植物において、AtABA2とAAO3の発現は検出されたが、AtNCED3の発現は検出できなかった。AtNCED3の発現は乾燥処理30分後より葉で増加することが確認された。次にロゼット葉におけるABA生合成酵素の発現組織(細胞)を免疫組織染色により調べた。乾燥処理前のロゼット葉において、AtNCED3の発現は確認できなかったが、乾燥処理後、NCED3は維管束柔組織において発現していた。AtABA2、AAO3も同様に維管束組織において発現していることから、乾燥により増加するABAは主に維管束組織で合成されることが示唆された。