日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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植物の高浸透圧ストレス応答におけるフォスファチジルイノシトール 4-キナーゼの役割
*加藤 大和青田 友美小林 裕子加藤 悦子服部 束穂
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p. 364

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抄録
イネプロテインキナーゼSAPKsは高浸透圧ストレスやABAによって迅速に活性化を受ける。我々は植物のストレス応答におけるSAPK周辺のシグナル伝達機構を分子レベルで解明する目的で、Oc細胞由来cDNAライブラリからSAPKと相互作用しうるタンパク質をコードする遺伝子のスクリーニングを行った。その結果得られた陽性クローンの一つは、塩基配列からphosphatidylinositol 4-kinase β (PI-4Kβ)をコードしていた。phosphoinositideは、高浸透圧ストレスやABA応答に重要な働きをしていることから、この遺伝子に着目して解析を進めた。SAPKとの相互作用が認められた領域をGST融合タンパク質として大腸菌で生産し、組換えSAPK2タンパク質による試験管内リン酸化反応を行ったところ、このタンパク質はSAPK2の基質となりうることが分かった。PI-4Kβのin vivoでの機能を明らかにするため、シロイヌナズナのT-DNA挿入変異株を用いた表現型の解析を行った。シロイヌナズナには相同性の高い遺伝子が2つ存在したため、これらの2重破壊株を作製した。2重破壊株は、野生株と比較して細胞伸長の低下により、植物体が全体的に矮化していた。また、培地の浸透圧に依存した根の皮層及び根毛を含む表皮細胞の伸長肥大の異常が認められた。以上の結果は、PI-4KβがSAPKを介したシグナル伝達において何らかの機能を持つ可能性を示唆している。現在この2重破壊株の示す表現型についてさらに解析を進めている。
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© 2007 日本植物生理学会
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