抄録
一般的に栽培イネは短日植物に分類され、短日条件下で開花が誘導されることが知られている。これまでの分子遺伝学的解析から、イネにおける光周性開花経路にはOsGI、Hd1、Ehd1、Hd3a遺伝子を介して開花が誘導されることが明らかにされてきた。しかし、これらの機構は一部の代表的な品種のみで調べられた結果であり、世界各地に幅広く分布した約20万品種とも言われるそれぞれの栽培イネ品種に共通した機構であるかは定かではない。またそれぞれの栽培イネは品種間で多様な開花時期を示すが、その分子機構の知見はほとんど報告されていない。以上を踏まえ、本研究では開花関連遺伝子の多様性の解析を行い、栽培イネにおける開花時期の多様性をもたらす原因とその分子機構を明らかにすることを目的としている。
本研究では、栽培イネにおける光周性開花経路の多様性の解析を行う目的で、栽培イネ64品種から構成されるイネコアコレクションを用いて、短日条件下における開花関連遺伝子の発現量および開花時期を調べた。この結果、Hd3a遺伝子の発現量と開花時期の間に相関関係が見られた。さらに、日本晴、カサラス、台中65号の3つの品種を用いて同様の解析を試みたところ、栽培イネの開花時期の多様性をもたらす要因の一つがHd3aの上流遺伝子の機能性である事が示唆された。以上を踏まえ本発表では、コアコレクションにおける開花時期の多様性と開花関連遺伝子の機能性の関係を議論したい。