抄録
シロイヌナズナの優性花成遅延変異体fwaでは、プロモーター領域のDNAメチル化の低下により、GL2型ホメオボックス遺伝子FWAが異所発現している。fwa変異体における花成阻害機構を明らかにするため、我々はエピアレルのfwa変異体及びFWA過剰発現体を用いたマイクロアレイ解析をおこなった。その結果、異所的に発現したFWAが他の遺伝子の転写制御を介して花成を阻害する可能性は低いと考えられた。一方、我々は酵母細胞内及びin vitroにおいて、FWA蛋白質がFT蛋白質と相互作用すること、この相互作用によって花成が阻害されることを明らかにした。さらに、FWAはFTとアミノ酸レベルで82%の高い相同性をもつTSFやウンシュウミカンのFTホモログであるCiFT、イネのFTホモログであるHd3aの過剰発現体の早咲き表現型を抑圧しないことから、FWAによる花成阻害効果はFTに特異的なものであると考えられる。
これらを踏まえて、我々はFWA蛋白質をFT蛋白質特異的な阻害因子として利用し、FT 蛋白質の作用機構を知るためのツールとして用いることを考えている。