抄録
シロイヌナズナでは様々な花成制御情報が、FTを含む花成経路統合遺伝子の発現制御の形で統合される。FT蛋白質はPEBP/RKIPファミリーに属しており、多くの植物種で相同分子種とみられる遺伝子が同定されている。近年、我々は遺伝学的解析によりFTと相互依存的に機能する別の花成制御因子FDを同定した。FDは茎頂で発現し、bZIP型転写因子をコードしている。本来子葉および葉の維管束で発現するFTを茎頂で発現させることでFTの機能喪失変異を相補できることから、FTは子葉および葉の維管束で発現し、茎頂へ移行してFDと相互作用して花成を制御する可能性が示唆された。一方、植物の相同分子種を含めてFT蛋白質の生化学的な機能は未だ不明である。FT蛋白質の機能的なEGFPとの融合蛋白質は核と細胞質の両方に存在した。また、FDの機能的なEGFP融合蛋白質は核局在を示す。そこで、BiFC法を用いてFTとFDの蛋白質間相互作用をタバコ表皮およびシロイヌナズナ形質転換体で観察したところ、両者が共存する核で蛍光を検出した。また、35S::FT:GR形質転換体はGR融合蛋白質の核移行条件であるdexamethasone依存的に花成が促進される。これらの結果は、FTが茎頂細胞の核内でFDと相互作用し花成促進に機能している可能性を強く示唆する。現在microarray解析を行いFTにより発現制御されている遺伝子の探索を行っている。