日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

エンドソームを介した花成制御経路の解析
*海老根 一生中野 明彦上田 貴志
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 392

詳細
抄録

細胞内では小胞を介してさまざまな物質の輸送が行われており,SNAREとRabはこの小胞の融合を制御する鍵分子である。われわれは,小胞輸送が植物の高次現象において果たす役割を明らかにすることを目的とし,とくにエンドサイトーシスに関与するSNAREとRabに注目し研究を行っている。液胞に局在するSNAREであるAtVAM3/SYP22のT-DNA挿入変異体では,植物の矮化,花成遅延,ミロシン細胞分化促進などの多面的な表現型が見られることが報告されている。われわれは,AtVAM3がエンドサイトーシスを制御するRAB5グループ(ARA6ARA7RHA1)と密接な遺伝学的相互作用を示すこと,atvam3がエンドサイトーシスに異常を示すこと,などを明らかにすることにより,AtVAM3が関わるエンドサイトーシス経路がこれらの多様な表現型の発現に寄与していることを見いだしている。
これらatvam3の表現型の中で,花成遅延に注目しさらに詳細な解析を行なった。シロイヌナズナの既知の花成制御経路とAtVAM3の関係を明らかにするため,atvam3のジベレリン応答,短日条件,春化処理における花成の観察,RT-PCRによる花成制御遺伝子の発現解析,flc-3 atvam3の表現型解析を行なった.その結果,atvam3においてFLCの発現が上昇していること,flc-3atvam3の花成遅延を抑圧することが明らかになり,atvam3の花成遅延はFLCを介した自律的花成制御経路の異常に起因することが示唆された。

著者関連情報
© 2007 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top