抄録
プロゲステロンは、ほ乳類において受精卵の着床や妊娠維持などの生理機能を持つ雌性ステロイドホルモンである。我々の研究グループでは、GC-MSによってアラビドプシス、イネなど様々な植物においてプロゲステロンが存在すること、および、プロゲステロンがアラビドプシス暗所発芽時の胚軸伸長を促進することを明らかにしてきた。そこで、プロゲステロンの植物における生理活性発現の分子機構を解明することを目的とし、プロゲステロン受容体候補遺伝子の探索を試みた。
動物で研究が進んでいる核内転写因子型のプロゲステロン受容体遺伝子は相同性解析の結果、植物ゲノム上には存在しないと考察されたが、近年新たに同定されたヒトの7回膜貫通型プロゲステロン受容体mPRについては、アラビドプシスのゲノムDNA上に相同性遺伝子を6種同定した。この6種の内、特にAmPR1遺伝子の破壊株において、花器官の大きさ、及びさやの長さが野生型に比べて30%短くなる形態を示すことが明らかになった。また、AmPR1:GFP形質転換体の構築により、AmPR1は細胞膜上に局在することが明らかとなった。
現在、このAmPR1タンパク質のプロゲステロン結合活性を評価する目的で、大腸菌におけるリコンビナントタンパク質の発現・精製を試みている。