抄録
Rab5は,エンドソームに局在し,GDP型とGTP型をサイクルして分子スイッチとして機能することにより,その融合を制御している.シロイヌナズナには,動物のRab5のオルソログと考えられるAra7/Rha1と,植物特異的なAra6の2つのタイプのRab5メンバーが存在する.私たちは,シロイヌナズナのすべてのRab5メンバーを制御するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF),AtVps9aの単離に成功した.AtVps9aの機能を完全に欠失したatvps9a-1変異体は,魚雷型胚で胚発生が停止する.このことから,発生の初期よりエンドサイトーシスが必須の機能を有することが示された.atvps9a-1変異体におけるAra6とAra7の細胞内局在を調べたところ,両者ともに細胞質への拡散が観察された.このことから,in vivoにおいても,Ara6とAra7がともに正常に活性化されていないことが示唆された.一方,部分的な機能欠失変異体であるatvps9a-2では,胚発生は完了するが,発芽後の根の伸長に異常を示した.この表現型は,Ara7のGTP固定型の過剰発現によって抑圧されたことから,atvps9a-2に見られる表現型が,主にAra7/Rha1の活性化異常に起因していることが示唆された.一方,Ara6のGTP固定型の発現はatvps9a-2変異に対し顕著な影響を示さなかった.このことから, Ara7/Rha1とAra6の機能が,同じAtVps9aの制御を受けるにもかかわらず,明らかに分化していることが示された.