抄録
煩雑な操作や高度な分析機器を必要とせず、水試料に加えて放置するだけで特定の化学物質を検出することが可能な微生物センサーを開発する。光合成細菌が合成するカロテノイドによる色調変化を、さまざまな細菌が有する転写スイッチによる制御と連動させることにより、化学物質を検出することが可能か否かの検討を行った。
紅色細菌Rhodovulum sulfidophilumのカロテノイド生合成の最終段階であるスフェロイデン酸化酵素の遺伝子crtAの発現調節を、大腸菌が有する亜ヒ酸あるいはR. sulfidophilumが有するジメチルスルフィド応答性の転写スイッチに連動させた。これらの二つのセンサー株では、それぞれ亜ヒ酸あるいはジメチルスルフィドが存在すると、1日以内に黄褐色から赤色へとカロテノイドの色調変化が生じた。検出下限濃度はそれぞれ0.6-6 μg/lと3-30 μMであった。亜ヒ酸あるいはジメチルスルフィドの添加により黄色色素であるデメチルスフェロイデンのモル比が減少し、赤色色素であるスフェロイデノンのモル比が増加した。また、菌体前培養あるいは化学物質検出の過程において、酸素分子がセンサーとしてのCrtA機能に必須であることが明らかとなった。重金属など他の化合物への適用、簡便な水質管理の開発を目指している。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)平成17年度産業技術研究助成事業