抄録
光合成系カロテノイド(Car)は光保護作用を行っている。そのメカニズムを知るために、バクテリオクロロフィル(BChl)の光分解に対するCarの作用を調べた。Rhodobacter (Rba.) sphaeroides R26.1からCarをもたない光反応中心(RC)、Rba. sphaeroides Ga、2.4.1からメトキシヌロスポレン(共役二重結合数n = 9)、スフェロイデン(n = 10)が結合したRCを調製した。赤色光(λ > 760 nm)を照射し、スペシャルペアバクテリオクロロフィル(P)のブリーチングの時間変化を追跡し、夫々のCarの酸化還元的光保護作用を比較した。スピリロキサンチン(n = 13)が結合したRhodospirillum rubrum S1のRCは調査中である。また、溶液中のBChl aとLH2に対しても、同様の実験を行った。
その結果、(1) BChl aは溶液中で光により酸化され、3-acetyl-Chl aに変化する。Carを加えるとこの反応は抑えられるが、nに依存しなかった。(2) RCのPでも同様の変化が起こり、nが大きくなると、抑制効果は増大した。(3) LH2のBChlでも同様の変化とn依存性が見られた。
以上の結果より、Carの光保護作用は、BChlとCarが蛋白に結合することでnに依存して効率的になることが期待される。