日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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酸性雪ストレス後の再生長初期過程における冬小麦緑葉の生理的変化
稲田 秀俊藤川 清三*荒川 圭太
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p. 479

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抄録
雪の酸性化は酸性雨と同様にこの10年間で着実に進行し、環境への影響が懸念されるが、その影響は定かではない。そこで我々は、酸性雪の積雪層下で植物が局所的に雪氷表面に濃縮された酸性物質に長期的に曝されたり、酸性度の強い融雪水に曝されたりすることを想定し、越冬性作物の冬小麦幼苗をpH 2からpH 4に調整した硫酸溶液中で凍結融解することで酸性雪ストレスを模し、酸性雪が越冬性植物に与える影響を調べることにした。これまでに、低温馴化した冬小麦緑葉を硫酸存在下で凍結融解(SAS処理)すると傷害が助長されることがわかった。そこで本研究では、低温馴化した冬小麦個体を-4℃のSAS処理(pH 2)に4時間施した後、融解してから10℃の12時間日長の条件下に移して再生長させ、個体への影響を調べた。冬小麦緑葉の葉齢の違いによりSAS処理に対する応答性に差異がみられたため、葉齢別に応答性を評価した。pH 2のSAS処理後に再生長させた冬小麦の第1葉(成熟葉)では、SAS処理直後に生じた可視傷害部位は広がらないが、著しく脱水されて生重量が低下することが分かった。一方、第2葉ではいずれも大きな影響は見られなかった。おそらく葉齢によって凍結抵抗性が異なるため、第1葉と第2葉でSAS処理後の再生長への影響にも違いが生じたものと考えられる。SAS処理直後に冬小麦に大きな傷害が観察されなくても、再生長過程において緑葉に影響が出ることが強く示唆された。
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© 2007 日本植物生理学会
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