抄録
Arabidopsis thaliana 近縁の塩生植物である Thellungiella halophila は、1) A. thaliana と形態が似ている、2) A. thaliana と同様の形質転換方法を用いることが可能、3) A. thaliana と核酸レベルで90%以上の相同性を有することから、A. thaliana との比較ゲノミクスに適する、これまでの塩生植物にない利点を持ち、顕著な耐塩性を示す。これまでの非塩生植物を用いた研究により、Na+の輸送に関わる細胞膜Na+/H+アンチポーター(SOS1),液胞膜Na+/H+アンチポーター(NHX1),細胞膜Na+トランスポーター(HKT1)が耐塩性において必須であることが報告されている。すなわち各変異株は塩高感受性を示し、各過剰発現植物は塩耐性を示す。T. halophila の耐塩性においても、A. thaliana と比較して、地上部への塩の蓄積が非常に抑制されていることからNa+輸送が優れていることが示唆された。本研究では、塩生植物 T. halophila におけるNa+輸送体の機能解析を行うために、T. halophila SOS1, NHX1 , HKT1 完全長cDNA を用いて、全長シークエンス、塩処理時における発現解析を行った。また現在、イオンクロマトグラフィーを用いて両植物体の塩蓄積量について調べているので合わせて報告する。