日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

シロイヌナズナ花茎重力屈性異常変異体sgr9の分子遺伝学的解析
*中村 守貴齋藤 知恵子森田(寺尾) 美代田坂 昌生
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 513

詳細
抄録
シロイヌナズナ花茎重力屈性異常変異体shoot gravitropism 9sgr9)は花茎重力屈性反応が低下しているが弱い重力屈性能を示す。SGR9遺伝子はRING fingerドメインを持つタンパク質をコードする。sgr5の花茎もまた弱い重力屈性能を示す。SGR5は転写因子と考えられるタンパク質である。いずれの遺伝子も花茎重力屈性反応において重力感受細胞と考えられる内皮細胞内で機能する。
sgr5sgr9二重変異体は8時間重力刺激を与えても全く屈曲せず,重力屈性能を失っていた。これまでに解析された重力屈性能を失ったsgr変異体では,内皮細胞の形成,あるいは内皮細胞内の液胞形成に異常がみられた。ところが,sgr5sgr9では,内皮細胞は形成され,液胞形成にも目立った異常は観察されなかった。花茎縦断切片の観察によると,野生型の内皮細胞内ではほぼ全てのアミロプラストが重力方向に沈降しているのに対し,sgr9では約半数の内皮細胞で数個のアミロプラストが沈降せずに細胞の中央部に観察された。一方,sgr5sgr9ではほぼ全ての内皮細胞で相当数のアミロプラストが重力方向に沈降せず細胞内に浮遊している様子が観察された。
以上のことから, SGR9はアミロプラストの沈降を介して,SGR5とは遺伝学的に独立に重力屈性反応に関与することが示唆された。現在,これらの変異体におけるアミロプラスト動態の解析を進めている。
著者関連情報
© 2007 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top