抄録
endoreduplicationは動植物にわたって広く見られる現象であり、核のploidyレベルと細胞の大きさが比例することは古くから知られている。しかし、核DNA量の増加がどのようにして細胞の体積増加を引き起こすかは明らかでない。
インゲンマメを約10日間弱い赤色光下で育てて第一葉の細胞分裂が終わった後、明るい白色光下に移すことによって、細胞を急速に大きくする方法(Van Volkenburgh and Cleland, 1979)の変法を用いて、細胞の体積増加を引き起こし、上面、下面表皮細胞と葉肉細胞の核DNA量の変化を調べたところ、下面表皮細胞と葉肉細胞は2Cのままであるが、上面表皮細胞では、明るい白色光下に移動後4日目までに同調的に4Cに増加する。このとき、下面表皮細胞は5日目までに面積が約60%増加するが、それ以後は増加しない。一方、上面表皮細胞の面積は、5日目までに約2倍になり、それ以後も増加し続ける。明るい白色光下に移動させるとすぐにプロトンの細胞外への排出が起こり、酸成長のメカニズムで、細胞壁のゆるみが生じて細胞の体積が増加することは既に知られている。このメカニズムによる細胞成長は5日目までに終わると考えられる。ここで得られた結果は酸成長後の細胞成長がendoreduplicationによって支えられていることを示唆している。