抄録
穂発芽は高温・多湿により穀類の種子が収穫前におこる現象であり、穂発芽した種子はその品質が低下することから、穂発芽耐性は穀類における重要な農業形質の一つとなっている。我々は、これまでに日本晴/カサラースの戻し交雑系統を利用して5種類の穂発芽関連QTLを見出している。今回は、第7染色体に存在する穂発芽耐性遺伝子Seed Dormancy 4 (Sdr4)を単離・同定した。高精度連鎖解析によりSdr4の候補領域を8.7 kbpに絞り込むことに成功した。この領域には3つの遺伝子が予測され、このうち2つの予測遺伝子が穂で発現していた。候補領域を含むカサラース由来のゲノム断片11.6 kbpを穂発芽が易である日本晴に導入し、固定系統に実った種子の発芽率を調べた結果、形質転換体の穂発芽は抑制された。さらに、候補遺伝子の一つのみを持つ3.3 kbpの断片を導入した結果、穂発芽の抑制が観察されたことから、この候補遺伝子がSdr4であること判明した。ミュータントパネルから見いだされた日本晴由来の候補遺伝子の欠失変異体では発芽率が上昇しており、日本晴型Sdr4にも穂発芽抑制機能が保持されていた。さらに、シロイヌナズナのホモローグのT-DNAタグラインでは発芽率の低下が観察されたことから、シロイヌナズナのSdr4ホモローグは、発芽を促進する因子であることが示唆された。これによりSdr4による発芽の調節機構は植物全般に存在することが示唆された。