抄録
我々はすでにDNA脱メチル化剤である5-アザシチジン(azaC)で短日植物であるシソの花成を長日条件下で誘導できることを明らかにしている。このとき、メチル化頻度の高いrDNA間のスペーサ領域が脱メチル化されることも示した。これらのことから、光周的花成にエピジェネティクスが関与する可能性が示唆された。光周的花成に関与する遺伝子の発現が脱メチル化によって誘導されるのであれば、次の世代ではその遺伝子は再メチル化され、不活性化されるはずである。そこで、azaC処理で開花したシソから得た種子を発芽させ、非誘導条件で育てたところ、その個体は花成に至らず、rDNAスペーサ領域は再メチル化されていた。これらの結果は、シソにはDNA脱メチル化をリセットする機構が存在し、花成関連遺伝子はこのような脱メチル化/再メチル化の制御下にあることを示唆する。つまり、シソの花成関連遺伝子は通常メチル化されており、短日条件で脱メチル化される可能性が考えられる。そこで、メチル化感受性の制限酵素を用いたAFLP法によって、DNAメチル化レベルの変化を調べた。シソのクローンを作成し、一方を長日条件、他方を短日条件で培養したところ、短日処理植物のDNAに特異的なバンドが検出された。このことは短日条件下でDNAのメチル化レベルが変化したことを示す。この短日特異的なバンドに基づいて花成関連遺伝子のクローニングを試みている。