抄録
シロイヌナズナの葉では向軸側(表側)と背軸側(裏側)とで細胞の形態や、気孔やトライコームの数が異なっていることが知られている。向軸側ではFILAMENTOUS FLOWER (FIL)などが、背軸側ではPHABULOSA (PHB)などが特異的に発現しており、それぞれの発現領域で細胞分化を促していると考えられている。向軸側・背軸側の領域の境界は常にそれぞれの表皮からほぼ等距離の位置に形成される。しかし、向背の境界の位置がどのような機構で決定されるかは分かっていない。
我々は背軸側特異的にGFP を発現するFILp::GFP 形質転換植物を変異原処理することによって向背の極性が異常になる突然変異体を複数選抜してきた。それらの突然変異体のうち、#1-63 突然変異体は背軸側マーカーの発現領域が向軸側にまで広がっている葉と、逆に狭くなっている葉の両方を形成するという表現型を示し、極端な場合には全体で背軸側マーカーを発現する針状の葉を形成した。また、#1-63 突然変異体において向軸側マーカーは、野生型と同様に背軸側のマーカーが発現していない領域で相補的に発現していた。このことから、#1-63突然変異体は向軸側と背軸側の境界位置の決定が異常になった突然変異体であると考えられた。#1-63突然変異体の葉の形態の解析、及び、原因遺伝子のクローニングの途中経過についても合わせて報告したい