抄録
高等植物において葉や花の側生器官は、向背軸、基部先端部軸、中央側方軸という三つの軸に沿って発生分化する。シロイヌナズナのasymmetric leaves2 (as2)変異体は、この三つの軸形成すべてに異常を示し、葉身の左右非対称な切れ込みや上偏成長、基部先端部軸での成長抑制、葉脈パターンの単純化など、多面的な表現型が現れる。これまでの解析により、AS2遺伝子はAS1遺伝子と共に、メリステムの維持に関わるclass 1 KNOX遺伝子(BP, KANT2, KNAT6)の発現を葉において抑制する機能を持つことがわかっている。class 1 KNOX遺伝子と同様に、AS2によって制御される新たな遺伝子を同定するために、マイクロアレイ解析を行った。野生型、as1変異体、as2変異体、AS2の過剰発現体の15日目の茎頂における発現を比較し、as1変異体、as2変異体において発現が増加し、AS2過剰発現体において発現が減少する遺伝子を調べたところ、複数の遺伝子が得られた。これらの遺伝子の中には、オーキシン応答性の転写因子であり、器官の背軸化に関わると考えられるETTIN(ETT)/ARF3が含まれており、AS2はETTを介して向背軸決定に関与している可能性が示唆された。今回我々は、AS2がどのようにしてETTの発現制御を行っているのかということについて報告したい。