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光情報伝達系において、赤色光受容体phyA/phyBの下流では多くの転写因子が働いており、重要な役割を担っている。しかし、その情報伝達・転写制御ネットワークに関しては、不明な点が多く残されている。シロイヌナズナにおいては、phyBと直接相互作用する因子として、PIF3やPIL1に代表されるbHLH型転写因子のサブファミリーが最もよく解析されている。これらシロイヌナズナにおけるPIF/PILファミリーは10種類近くのメンバーからなり、発芽、緑化、胚軸伸長、避陰反応など様々な赤色・遠赤色光応答に関わっていることが明らかになりつつある。これらのフィトクロムに関与した光応答は植物に普遍的であり、PIF/PILファミリーbHLH因子群も広く保存されていると予想される。今回、我々はイネを対象としてPIF/PILファミリー因子の比較機能解析を行った。イネにおいて最低6種類のPIF/PIL型bHLH遺伝子(OsPIL11-OsPIL16)を見いだして比較分類し、また、その発現様式等の性質を解析した。さらに、それらの遺伝子をシロイヌナズナに導入することによりOsPIL因子の機能解析したところ、いずれも光応答関連の働きを連想させるような表現型を示した。これらの結果をまとめて、イネにおけるフィトクロム結合型bHLH転写因子ファミリーに関して考察する。