日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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イネ葯特異的遺伝子群の高温ストレス下での発現変動
*遠藤 誠土屋 亨大島 正弘東谷 篤志渡辺 正夫川岸 万紀子
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p. 541

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抄録
植物の生活環の中で生殖期は環境条件に最も敏感であり、不良環境下では不稔となる。我々は、外界の温度の感知から最終的に不稔となるまでの過程に働く分子制御機構の解明を目指して研究を進めている。小胞子期の初め頃にあたる時期のイネに、2から4日間の39℃の高温処理を施すと、その後28℃の常温に戻しても不稔となることがわかった。高温処理開始2、3、4日後の葯よりRNAを調製し、マイクロアレイ解析を行った。高温処理2日後の葯で、同時期の無処理サンプルと比べ発現量が著しく低下する15遺伝子を見いだした。個々の遺伝子の発現パターンを調べたところ、これらは小胞子を含む葯に特異的に発現する遺伝子であり、少なくとも半数はタペート細胞特異的な発現様式を示すことがわかった。また、高温処理4日後の葯において、通常の条件では成熟葯特異的に発現するべき約150の遺伝子の発現が上昇していた。しかし、高温処理後に常温に戻して育成した成熟葯では、これらの遺伝子の発現量は通常より低下していた。以上のことから、高温によって、タペート細胞の機能が一部損なわれて、一連の成熟葯特異的遺伝子群の発現時期のずれが誘導されているのではないかと推察された。現在、高温処理後の葯の詳細な観察を行うとともに、高温処理後に発現が低下する葯特異的遺伝子に着目し、ノックダウン解析により個々の遺伝子の発現の低下が不稔に結びつくかどうかを調べている。
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© 2007 日本植物生理学会
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