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イネのDNA型トランスポゾンnDart (non-autonomous DNA-based active rice transposon)は、黄色地の葉に緑色のセクターが入る易変性変異系統から見いだされたAc/Ds系の非自律性因子で、活性な自律性因子aDart (autonomous Dart)の転移酵素により転移すると考えられている。交配試験により、易変性変異系統には1コピーのaDartが存在する一方、‘日本晴’には構造上は約50コピーのaDart候補因子が存在するものの、いずれも不活性な因子 iDart (inactive Dart) であることが示唆されている。
我々は、aDartの同定を目指し、先ずマッピングによりaDartが易変性変異系統の第6染色体に座乗することを明らかにし、さらにクローニングによりaDartは ‘日本晴’のiDart1-27と同一因子であることを明らかにした。即ち、易変性変異系統では自律性因子として機能するaDartは、‘日本晴’のゲノム中においてはエピジェネティックに制御を受けて不活性化されていると思われた。そこで、‘日本晴’の不活性なiDart1-27をクローニングし大腸菌内で増殖させて、植物内でのメチル化状態を解除し、nDartと共に再び植物体へ導入したところ、活性な自律性因子として機能することが確認できた。