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トランスポゾンタギングは、機能ゲノム学的解析の有力な手法の1つであり、我々がイネで最近同定した内在性のnDart系DNAトランスポゾンのタギングへの有用性を検証すべく、イネでのnDart関連因子の動態を解析している。非自律性のnDart1系因子の幾つかは自然栽培条件下で活性な自律性因子aDartを有するpyl-v系統で転移する。一方、活性なaDartを持たないpyl-stbや日本晴では、nDart1は転移しないが、DNAのメチル化阻害剤である5-アザシチジン(5-azaC)処理すると、nDart1及び自律性因子様の構造ではあるが転移活性を持たないiDart1系因子の幾つかは転移脱離し、iDart の転移酵素遺伝子の発現もRT-PCRで確認できた。さらにpyl-stbや日本晴ではサイレンシングを受けていると考えられる自律性因子iDart1-27の5`末端領域のDNAメチル化は、5-azaC処理すると低下することも明らかになった。また5-azaC処理したpyl-stbの次世代では、nDart1が新たに3ケ所に転移挿入されていたので、nDart1系因子が挿入後に安定化した新たな変異体を5-azaC処理して復帰変異や再挿入変異を得ることもできると考えられ、タグされた遺伝子の同定にも有益であると思われる。