日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナの生殖におけるCTP:ホスホリルエタノールアミンシチジリルトランスフェラーゼの役割
*溝井 順哉西田 生郎
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p. 545

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抄録

ホスファチジルエタノールアミンは植物の葉緑体以外の生体膜に含まれる主要なリン脂質である.CTP:ホスホリルエタノールアミンシチジリルトランスフェラーゼ(PECT)は,その主要な合成経路の鍵酵素で,シロイヌナズナでは唯一の遺伝子PECT1によってコードされている.われわれは,ヌルアリルの,pect1-6と弱い変異アリルのpect1-4を用いてPECTの生殖に関する機能を調べた.
pect1-6ホモ接合体が胚発生のごく初期に発生を停止したので,PECT活性は胚発生に必須である.一方,pect1-6ヘテロ接合体と野生型による相反交雑においてpect1-6の配偶体は野生型と同様の稔性を保持していたので,配偶体世代においてPECT1の発現は必須でない.
PECT活性が野生型の19%まで低下するpect1-4/pect1-6ヘテロ植物は,著しい矮性と稔性の低下を示した.pect1-4/pect1-6植物の自家受粉によってできた長角果の内部には未受精の胚珠が多数存在したが,これは,葯が正常に花粉を生産できないことと,胚珠が正常に胚嚢を形成できないことの両方に原因があることがわかった.したがって,生殖器官における配偶体の形成には十分なPECT活性が必要であるといえる.さらに,自家受粉によってできるpect1-4/pect1-6胚の多くが致死となっていたことも種子数減少の一因であった.

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© 2007 日本植物生理学会
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