抄録
私たちは2002年度本学会において、核タンパク質輸送体成分であるイネインポーティンα(IMPα)のうち、光照射で発現が下方制御されるIMPα1aと特異的に結合する新奇タンパク質(IABP4と仮称)について報告した。IABP4はタンパク質間相互作用に働くとされるTPRドメインと推定核局在化配列(NLS)を含むため、他のタンパク質と複合体を形成して核内で機能することが予想された。IABP4はIMPα1aによる特異的な認識によって暗黒条件で核に蓄積する可能性があるが、IABP4が実際に核局在性を示すのか、さらに推定NLS配列が実際に機能するのかは明らかにされていなかった。そこで今回、IABP4の全長または様々な部分断片と緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質をタマネギ表皮細胞で発現させ、それぞれの細胞内局在性を調べたところ、3ヶ所の推定NLS配列を含むC末端断片との融合タンパク質のみが核局在性を示した。さらに、推定NLS配列を1個のみ含む断片とGFPの融合タンパク質の細胞内局在性を調べた結果、1ヶ所の推定NLS配列を含む融合タンパク質のみが核局在性を示し、NLS配列が特定された。しかし、全長IABP4との融合タンパク質が核局在性を示さなかったことから、N末側領域に存在する推定核外輸送配列(NES)の役割を含め、細胞内局在性が光環境による調節を受ける可能性を現在検討中である。