抄録
種子貯蔵タンパク質は、登熟期に大量に生合成され、自身の持つ選別輸送シグナル(VSD)がレセプターに認識されることによりタンパク質貯蔵液胞(PSV)へ輸送される。我々が構築したダイズ登熟期種子を用いるVSD解析システムを用いて、ダイズ11Sグロブリン(グリシニン)の主要なサブユニットであるA1aB1bには、C末端型シグナル(ctVSD)と高次構造により形成されるシグナル(psVSD)が存在していることを明らかにした。本研究では、A1aB1bのVSDと緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質のPSVへの選別輸送に対する阻害剤及びドミナントネガティブ(DN)small GTPaseの効果を解析した。
A1aB1bのctVSD及びpsVSDとGFPとの融合タンパク質を、ダイズ登熟期種子で一過的に発現させ、小胞体からゴルジ体への輸送などを阻害するbrefeldin A及びイノシトールリン脂質のリン酸化阻害剤であるwortmanninで処理した。その結果、両者のPSVへの輸送が完全に阻害され、brefeldin Aでは小胞体のマーカーと、wortmanninではプレ液胞区画のマーカーと共局在した。また、DNsar1及びarf1の共発現によっても、両者のPSVへの輸送が阻害された。以上の結果から、A1aB1bのPSVへの選別輸送機構を考察する。