抄録
Hsp90は酵母やショウジョウバエで生存に必須なタンパク質であるが、大腸菌や枯草菌ではHsp90のホモログであるhtpG遺伝子を破壊しても生存に影響がなく、高温条件下でも顕著な表現型が現れない。ところが、我々はSynechococus sp. PCC7942のhtpG遺伝子破壊株の高温処理後の生存率が野生株の1/1000以下に低下することを見出し、HtpGが熱耐性の獲得に必須であることを初めて明らかにした。また、昨年度の本年会において、HtpGが集光性超分子フィコビリソーム(PBS)の構成サブユニットである30kDaリンカーと相互作用することを報告した。HtpGはN末ドメイン、中間ドメイン、C末ドメインの3つのドメインに大別され、N末ドメインはATP結合に、C末ドメインは二量体形成に関与することが明らかにされている。本発表では、HtpG各ドメインとリンカーとの相互作用部位を明らかにするために、N末ドメイン、C末ドメイン、N末/中間ドメイン、中間/C末ドメインを大腸菌で大量発現しNiカラムで精製した。各ドメインとリンカーとの相互作用は、各ドメインによるリンカーの熱変性凝集抑制実験で調べた。その結果、HtpGのN末及び中間ドメインがリンカーと相互作用し凝集抑制効果を示した。ATP存在下では、N末ドメインの凝集抑制活性は著しく減少した。