抄録
集光性超分子会合体フィコビリソーム(PBS)は窒素の貯蔵形態の一つと考えられており、窒素栄養飢餓状態では速やかに分解され、窒素源添加後再構築される。これらの過程の分子メカニズムは未解明である。我々は、分子シャペロンHtpG(Hsp90)が、PBS超分子構造の安定化に寄与すると考えられているリンカーポリペプチドと相互作用することを明らかにして、昨年度の本年会で発表した。本研究では、HtpGがPBSの分解及び再構築に関与するという作業仮説をたてて、Synechococcus sp. PCC 7942 のhtpG遺伝子破壊株におけるPBSの分解と再構築の過程を生化学的・形態学的に解析した。野生株に比較して、htpG変異株では分解と再構築の両方が阻害されていた。窒素栄養の欠乏に伴い細胞内HtpG蓄積量が増加したが、これらの結果はHtpGが分解や再構築に関与することを支持するものである。飢餓細胞からPBSを単離し透過型電子顕微鏡で解析したところ、htpG変異株では野生株に比べより多くのPBS会合体が見られた。現在、構築過程についても同様の解析を行っているところである。