日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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熱処理によるHSP90活性の減少が熱応答を引き起こす
*山田 健志深沢 美津江鈴木 育西村 幹夫
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p. 575

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抄録
植物は生育温度より少し高い温度(熱ショック)にさらされると熱ショックタンパク質を蓄積し高温耐性を獲得する.この熱に対する馴化は,植物が熱でしおれず成長するために必要である.どのようにして植物が熱応答遺伝子の発現を制御しているかは不明であったが,私たちはHSP90が熱応答遺伝子の発現を制御していることを見いだした.シロイヌナズナを用いHSP90阻害剤の効果を調べたところ,一時的なHSP90阻害剤処理で熱応答遺伝子の誘導とともに高温耐性が獲得され,熱ショックなしに熱に対する馴化を誘導できた.HSP90の基質,グルココルチコイドレセプター(GR)を発現するシロイヌナズナを用い,GRの応答を指標としてin vivoにおけるHSP90の活性を調べたところ,熱ショックでHSP90の活性が低下することがわかった.一方,熱ショックまたはHSP90阻害剤処理により発現が上昇する遺伝子のプロモーター領域には熱ショック転写制御因子(HSF)が結合する熱ショックエレメント(HSE)が見つかった.いくつかのシロイヌナズナのHSFは常に発現しており,熱処理やHSP90阻害剤処理により発現量は変化しなかった.これらのことから,HSP90によりHSFが負に制御され,熱ショックによるHSP90の活性低下がHSFを活性化し,熱応答遺伝子を発現させることが示唆された.
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© 2007 日本植物生理学会
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