抄録
植物の地上部は、光・大気を効率的に獲得するために、重力を利用し自身の成長点をより高い位置に押し上げる仕組みを有する。例えば、茎を重力方向に折り曲げたまま生育させると、最上位となった節の腋芽が成長を開始し新たな頂芽として振る舞う。我々は、この頂芽優勢の打破を、重力により制御される腋芽伸長現象として注目し、解析を行っている。これまでに、アサガオの重力屈性欠損変異株(we)を用いた解析の結果、折り曲げによる頂芽優勢の打破は重力応答を必要とすることを明らかにした。しかし、その機構は全く未解明であり、それが摘心による頂芽優勢打破と同様の機構によって制御されるかどうかも明らかになっていない。そこで本研究では、重力応答による腋芽伸長機構を解明する糸口を見出すために、頂芽優勢に働くサイトカイニンとオーキシンに注目し、折り曲げ処理時におけるそれらの動態変化を解析した。まず、野生型アサガオに対し摘心処理を行った結果、節においてサイトカイニン内生量が増加した一方で、オーキシン応答は低下した。これに対して、折り曲げ処理を行った場合は、頂芽優勢の打破が生じる野生型およびそれが生じないwe系統において、サイトカイニン内生量およびオーキシン動態に顕著な変化は認められなかった。従って、重力応答による頂芽優勢の打破は、摘心による場合とは独立した機構によって起こる可能性が示唆された。