抄録
テトラピロール生合成系において、グルタミン酸tRNA還元酵素(HEMA)とフェロキラターゼ(FC)のアイソフォーム、HEMA2とFC1は、主に根や胚軸などの非光合成組織で主に発現している。昨年の本大会において我々は、シロイヌナズナHEMA2、FC1の発現が傷害処理やオゾン処理により、光合成組織において誘導されることを報告した。今回、HEMA2、FC1の酸化ストレスによる発現変化について解析したところ、これらの遺伝子がメチルビオロゲンやローズベンガル処理により誘導されることを見出した。従って、HEMA2、FC1の発現誘導には細胞内における活性酸素の発生が関与していることが明らかとなった。HEMA2、FC1の遺伝子破壊株について解析したところ、野生株に対して、根におけるヘム含量の低下が認められた。また0.2ppmオゾン処理を6時間行ったところ、野生株ではヘム含量の増加が認められたが、破壊株ではいずれもヘム含量が減少していることが明らかとなった。以上の結果から、HEMA2とFC1は、通常の生育条件では非光合成組織におけるヘムの供給に機能しているが、酸化ストレス時には防御応答に関わるヘム蛋白質へのヘム供給に機能していることが示唆された。