抄録
植物において、ヘムは葉緑体で生合成され細胞内の様々なオルガネラで機能する。また、テトラピロール中間体は核コードの光合成遺伝子の発現を制御するシグナルの一つと考えられている。昨年我々は、シロイヌナズナにおいて、細胞内でのテトラピロール輸送に関わる動物のp22HBP/SOULファミリーと高い相同性を示す遺伝子族が存在し、実際に組換えタンパク質がヘム結合性を示すことを報告した。今回、シロイヌナズナの細胞質型テトラピロール結合タンパク質(TBP)について解析を行った。データベース解析により、シロイヌナズナの細胞質型TBPとして4遺伝子が認められたが、1つの遺伝子(At1g78450)のORFには欠失が認められたため、偽遺伝子であると考えられた。細胞質型TBPと考えられるAt1g17100(TBP17100)とAt3g37970(TBP37970)の組換えタンパク質を用いて、金属ポルフィリン類に対する結合特異性実験を行った結果、2つのタンパク質はヘム(Fe-プロトポルフィリンIX)に対して特異的な結合を示したが、その他の金属ポルフィリン類(Mn-, Sn-, Mg-, Co-プロトポルフィリンIX)に対しては非特異的な結合しか示さなかった。また、プロトポルフィリンIXに対して、TBP17100は特異的な結合を示したが、TBP37970は非特異的な結合しか示さなかった。以上の結果から、これら2つの細胞質型TBPは植物細胞の細胞質におけるテトラピロール輸送において、異なる機能を果たしている可能性が示唆された。