抄録
光合成明反応における高効率な光エネルギー変換は、光化学系(PS)を構成する電子伝達鎖のレドックス電位の絶妙な調節により支えられているものと推測されるが、詳細は明らかにされていない。これまでに我々は分光電気化学的な手法を適用することで、光化学系I一次電子供与体P700の酸化還元電位を高い精度で測定することに成功し、さらに生物種によってP700酸化還元電位が異なることを初めて見出してきた。P700酸化還元電位の生物種依存性の要因究明が、光化学系Iにおけるレドックス電位調節機構の解明にもつながると期待できるが、本研究では要因の1つとして考えられるP700の分光特性について詳細な検討を行った。
シアノバクテリアや、紅藻、緑藻、高等植物など一連の酸素発生型光合成生物のP700+-P700の酸化還元差吸収スペクトルおよびCDスペクトルを分光電気化学的手法により調べた。吸収スペクトルについては、700 nm付近の吸収波長にはおおきな変化は見られなかったものの、Qyバンド領域を含めて形状が生物種によって異なることが明らかとなっている。CDスペクトルについては、生物種によって波長および形状が違うことが観測された。これらの結果とP700酸化還元電位との相関について本発表にて報告する。