抄録
緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)の光化学系I(PSI)は14種のポリペプチドと約100のクロロフィルaやカロテノイドを含む複合体である。また、PSIのアンテナ複合体であるLHCI(light-harvesting complex I)は約100-200分子のクロロフィルaおよびbを持ち、PSI反応中心へ励起エネルギーを伝達している。高等植物と緑藻ではPSIとLHCIは強く結合しているため、チラコイド膜を温和な界面活性剤で可溶化すればPSI-LHCI supercomplexを精製することができる。高等植物のアカエンドウから単離されたPSI-LHCI supercomplexは4.4A分解能でX線結晶構造解析に成功し、PSI複合体の片側に4つのLHCIを結合することが明らかにされた。一方、クラミドモナスのPSI-LHCI supercomplexには、9種のLHCIタンパク質が存在し、その内7種は十分な量、残りの2種は微量存在する。クラミドモナスでは多量のLHCIがどの様にPSI複合体に結合しているかは不明であり興味深い。そこで、本研究ではX線結晶構造解析によりクラミドモナスのLHCIの存在状態を明らかにするため、PSI-LHCI supercomplexを大量精製する方法の開発を行い、さらに得られた標品の結晶化を試みたので報告する。