抄録
緑藻Chlamydomonas reinhardtii には、光化学系Iサブユニットをコードする遺伝子が核と葉緑体ゲノムに14種類存在するが、精製した系I複合体標品にはPsaNとPsaOが検出されない。PsaNは約10kDaの膜表在性タンパクでルーメン側に存在し、PsaOは約10kDaの2本の膜貫通へリックスを持つ膜内在性タンパクであると考えられている。系I結晶構造解析標品にはPsaN、PsaOとも存在せず、系I複合体における存在位置は明らかにされていない。我々は、クラミドモナスのPsaNとPsaOの合成オリゴペプチドを用いて抗体を作成し、その分布を調べた。その結果、PsaNとPsaOは精製した野生株のチラコイド膜に存在するが、系I欠損株に蓄積しないことがわかった。また、チラコイド膜を温和に可溶化して系I複合体を分離するとPsaNとPsaOは容易に遊離した。チラコイド膜をカオトロピック試薬で処理してもPsaNとPsaOは遊離した。したがって、PsaNとPsaOは系I複合体にゆるく結合することが示された。興味深いことに、クラミドモナスのPsaF欠損株は系I複合体を正常に蓄積しているが、PsaOは殆ど蓄積しなかった。これはPsaOの安定性にPsaFが必要であることを示唆している。これらの結果から、系I複合体におけるPsaOの結合部位に関して議論をする予定である。