抄録
フェレドキシンNADP酸化還元酵素(FNR)は酸素発生型光合成電子伝達反応において、光化学系Iの還元側で機能し、還元型フェレドキシンを酸化しNADP+をNADPHへ還元する反応を触媒する。チラコイド膜を単離すると一部のFNRは遊離するが残りは安定にチラコイド膜に結合している。高等植物では単離されたチラコイド膜に結合するFNRはシトクロムb6f複合体標品に分画され、循環型電子伝達反応に関与する可能性が考えられている。本研究では緑藻クラミドモナスの単離チラコイド膜に存在するFNRを定量し、安定に結合するFNRの機能の解析を試みた。光従属栄養条件下で生育させた野生株ではおよそ40%のFNRが単離したチラコイド膜に結合し、NADP+光還元活性を保持していた。しかし、光化学系II欠損株の単離チラコイド膜には大きく減少し、シトクロムb6fもしくは光化学系I欠損株の単離チラコイド膜には検出されなかった。野生型の単離チラコイド膜に結合するFNRの分布を調べるため、チラコイド膜を可溶化し分画したところ、ほとんどのFNRはサイズの大きな光化学系I複合体に分画され、微量がシトクロムb6f複合体に分画された。緑藻クラミドモナスでは非循環と循環型電子伝達の調節はステート遷移に依存していると考えられているが、単離したチラコイド膜に結合するFNRとステート遷移との関係について議論する予定である。