抄録
藻類のCO2濃度の変化に対する応答機構は、淡水性藻類において古くから研究がなされているが、海洋性藻類においては報告例が乏しいのが現状である。本研究では、海洋の最有占種である海洋性珪藻の大気CO2濃度変化に対する応答機構の体系的な理解を目的として、海洋性珪藻Paeodactylum tricornutumにおけるCO2応答性遺伝子の半網羅的な探索を行なった。5%CO2(高CO2)及び現在の大気条件である0.038%CO2(低CO2)に順化させた細胞について、cDNA-AFLP(cDNA-amplified fragment length polymorphism)解析を行い、現在までに20のcDNA断片についてCO2応答性を確認した。このうち低CO2で抑制されるものは13あり、その中にはラン藻で同様の報告があるトリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子などが含まれていた。低CO2で誘導されるものは7あり、その中にはラン藻で低CO2での抑制が確認された亜硝酸還元酵素遺伝子が含まれていた。この事から、海洋性珪藻の窒素代謝系はラン藻とは異なるCO2応答をすることが考えられた。その他のCO2応答性遺伝子断片についても討論する。